家守綺譚

2011.07.20 Wednesday

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    最近、あまり心魅かれる本がなく
    読んでも抜けてゆかずに心にとどまる作品に出会いたい
    そう欲していたら
    父が貸してくれた本の中に
    素敵な作品がありました


    「家守綺譚」梨木香歩 著





    ちょうど明治30年代後半あたりの山奥の村を舞台に
    文筆家の主人公が出会う、自然と大気と妖怪と幽霊との交歓の記録

    ......と書くと、なんだ妖怪モノか〜と思ってしまいますが
    これまたそんな一言では表せないような
    不思議な空気感に包まれた作品
    土着の民俗学的要素も交えた山と川の日常と
    その隣にある自嘲的ユーモアに溢れた非日常の光景が
    読んでいると脳裡に浮かび上がるよう

    私の好きなくだりは
    主人公が長虫屋と呼ぶ、妙薬のための資材を集める薬屋さんとのやりとり
    カワウソにもらった鮎を返しに行く主人公が
    鮎を手にバッタリ薬屋に出会い

    ーカワウソ老人に返さねばならないのだ。

    ー何の不都合もありません、私が云っておきますから。

    ー君はカワウソと知り合いなのか。

    ー母方の祖父です。


    えぇ!ヒトじゃなくて、しかも
    じいさんなのかい!

    とまぁ、小さなつっこみどころが満載で
    実に面白い

    小鬼を見た後に、近所のおかみさんが
    「啓蟄ですから」とつぶやく場面も
    日本人が失いつつある想像力が
    まだ日常に根付いていたことを思い起こさせます

    昔は、虫や風、さまざまな自然のものを
    鬼や妖怪に見立てて四季折々を過ごしていたといいます
    春になって虫が出てくる啓蟄に
    よくよく虫を見ていたら、小さな鬼だった
    といった話は民俗奇譚などにかなり頻繁に出てきます
    夜に大松を見て入道と思い
    川で水藻を見て河童と思う
    日本昔話の基本ですね

    夏の夜は、こんな本を読みながら
    想像力をふくらませて面白い夢でも見たいものです